梅田望夫氏と飯吉透先生(Twitter)の共著『ウェブで学ぶ-オープンエデュケーションと知の革命-』(ちくま新書)は、“開かれた知”のムーブメントがネット上で広大に展開していることを教えてくれる良書です。本書で取り上げられている様々な教育系サイトの一覧は巻末にまとめられているのですが、私なりにもう一度、リンクとコメントつきでまとめておきたいと思います。また、オープンエデュケーションやネットと学びに関連するサイトをオマケとして付け加えて随時更新しています。
Contents
はじめに
- MIT OpenCourseWare
- オープンエデュケーションの旗手とも言える、マサチューセッツ工科大学のOpenCourseWare(OCW)。ルーウィン教授の授業「物理概論」(Physics I: Classical Mechanics)もここから視聴できる。
第1章 ウェブ進化が人生を増幅する
- Google books
- Googleが、ミシガン大学・ハーバード大学・スタンフォード大学・ニューヨーク公立図書館・オックスフォード大学・カリフォルニア大学などと提携して、様々な書籍をオンライン化しているプロジェクト。発足は2002年から。
- Times Machine
- New York Timesの、1851年9月18日の創刊第1号から1922年12月30日号までの紙面が無償公開されている。
- National Gallery of Art-Online Tours
- ワシントンDCにあるNational Gallery of Artのオンラインツアー。
- Wikipedia
- ご存知、誰もが無料で利用でき、かつ、編集に参加できる百科事典。集合知(collective intelligence)の象徴的な存在ですね。運営主体のウィキメディア財団は他にもいろいろなプロジェクトを行なっている。
- arXiv.org e-Print archive
- archiveとおなじ発音の、物理学・数学・計算機科学・量的生物学などの論文が多数収められたプレプリントサーバ。ロスアラモス国立研究所からスタートしたプロジェクトで、現在の運営元はコーネル大学図書館。ペレルマン博士によるポアンカレ予想の論文が最初に投稿されたサイトとしても有名。
- Nature Precedings
- 世界的に権威のある総合学術誌『Nature』を発行するNature Publishing Groupが運営する、ピアーレビュー(同じ領域の専門家による査読審査)のないプレプリントサーバ。収められている論文は、生物医学・化学・地球科学が中心。
- Encyclopedia of Life
- 世界中の動植物に関する情報にアクセスできます。各記事を執筆しているのは専門家。
- WorldWide Telescope
- Microsoft Researchが提供する3Dプラネタリウムソフト。
- Google Sky
- Google Earthの一部として提供されている天体情報サイト。
- DIYbio
- 世界中のアマチュア生物学者やバイオテクノロジー愛好家が集うサイト。様々なプロジェクトが行われている。DIYはDo It Yourselfの略。
- TakingITGlobal
- 世界中の様々なイシューに対する問題意識を持つ若者たちが集うNGOのSNS。
- LinkedIn
- ビジネスに特化したSNS。利用者の履歴書情報を中心とし、サービスの中で求人や商談を行ったり、専門家とコンタクトを取ることができる(Wikipediaより)。
- Elance
- フリーランスのデザイナー、プログラマー、作家、翻訳者などに仕事を発注できるWeb上のアウトソーシング・サービス。受発注は主に新興国と先進国間で行われる。「Elance:Web2.0時代のオンデマンド・アウトソーシング市場」が参考になる。
- The Cape Town Open Education Declaration
- オープンエデュケーション支持者たちによって2008年に発表された宣言。宣言には、WikipediaのJimmy Wales氏、UbuntuのMark Shuttleworth氏のほか、Real World Studioの創設者であるPeter Gabriel氏、Creative Commonsの創設者兼最高経営責任者(CEO)であるLawrence Lessig氏らが署名した。
- * CoCube
- インドのベンチャー企業が起ち上げた、就職活動をする学生と企業を繋ぐSNS。学生は利用料として年間40ドルを支払う。企業は無料で利用できる。
第2章 オープンエデュケーションの現在
- Sakai Project
- 世界の大学や営利団体などによって進められている、教育ソフトウェア開発を行うプロジェクト。Javaで書かれたオープンソースのLMS(Learning Management System)などを提供しており、世界中の教育機関で運用されている。
- 日本オープンコースウェア・コンソーシアム(JOCW)
- China Open Resources for Education (CORE)
- 中国の非営利団体で、MITやヒューレット財団、教育省(MOE)などからの援助を受けて、中国の高等教育にMIT OCWなどの先進的なオープンエデュケーション技術を導入することをミッションに掲げている。
- Universia
- スペイン語圏の教育機関によるオープンエデュケーション連合。スペイン語による講義サイトを多数公開。
- UniversitySurf
- フランス語圏のオープンエデュケーションのポータルサイト。様々な教育機関から1,500以上の講義が登録されている。
- Moodle
- PHP+RDBMSで動くオープンソースのLMS。多言語化されており、数多くの教育機関で利用されている。
- ランディ・パウシュの「最後の授業」1 / 2 / 3 / 4 / 5 / 6 / 7 / 8 / 9
- カーネギーメロン大学教授でバーチャルリアリティ研究の第一人者であるランディ・パウシュ(Randy Pausch)氏が、末期ガンを宣告されてから行った、ユーモアあふれる最後の授業。日本語字幕つき。
- PhET
- 物理学、化学、生物学などの基本的な原理や法則を理解するための、わかりやすい科学実験シミュレーション・プログラムが公開されている。コロラド大学教授(当時)でノーベル物理学賞受賞者のカール・ワイマン(Carl Edwin Wieman)氏が同僚と始めたプロジェクト。
- A Vision of Students Today
- カンザス州立大学助教のマイケル・ウェッシュ氏(Michael Wesch:人類学)が200人の学生たちと創り上げたショートムービー。
- カーネギーメロン大 オープン・ラーニング・イニシアチブ(OLI)
- カーネギーメロン大学が提供するOCW。MIT OCWと異なり、一般ユーザの使い勝手を考えて作りこまれた講義が厳選して公開されている。
- National Science Digital Library (NSDL)
- アメリカ国立科学財団(National Science Foundation)によるサイト。様々なレベルの理系科目の教材が公開されている。
- Edutopia
- Star Warsでおなじみのジョージ・ルーカス氏(George Lucas)が起ち上げたジョージ・ルーカス教育財団によるサイト。K-12(幼稚園から高校3年生)向けの教材や動画を公開している。
- Curriki
- K-12教育に関わる教師、生徒、保護者たちのコミュニティサイト。サイト名はCurriculum + Wikiの造語。
- MIT BLOSSOMS
- MITによる、初等・中等教育向けのOCW。途上国の学校での利用が想定されている。
- * オバマ大統領による高等教育に関する演説@ミシガン州マコーム・コミュニティカレッジ
- 本書内で「オープンエデュケーション宣言」として言及されている、 2009年7月に行われたオバマ演説の全文書き起こし。
- Sofia Open Content Initiative
- MIT OCWのコミュニティカレッジ版と本書で言及されているプロジェクト。カリフォルニア州のフットヒルカレッジが主導。
- Connexions
- テキサス州のライス大学が起ち上げたオープン・テキストブックのプロジェクト。様々な分野の教科書がPDF形式などでダウンロードできる。
- Flat World Knowledge
- オープン・テキストブックのベンチャー企業。製本版や補助教材の売上を著者に直接還元するビジネスモデル。
- * ヒューレット財団(William and Flora Hewlett Foundation)
- ヒューレットパッカード社の創業者であるウィリアム・ヒューレット氏(William Hewlett)による財団。上記のSofia、Connexionsの他にも数多くの教育プロジェクトを助成している。ちなみにパッカード財団もある。
- * Wikibooks
- ウィキメディア財団によるオープン・テキストブックのプロジェクト。
- The Open University
- イギリスの、オンラインによる大学。学部と大学院を持つ。学生サポートも図書館利用もオンラインで。
- Western Governors University
- アメリカのオンライン大学。特定のカリキュラムに沿うのではなく、学習者の経験や技能の習熟が一定上と認められれば単位認定をするというCompetency-based learningが特徴。
- African Virtual University
- World Bankプロジェクトのひとつとして1997年にスタートしたアフリカのオンライン大学。
- UNESCO Virtual University
- UNESCOによるオンライン大学・・・なのでしょうか。ちょっと不明。
- Opening Up Education
- 飯吉氏がカーネギー財団での仕事の集大成として”「21世紀のオープンエデュケーション」の黎明期におけるビジョンと可能性を包括的に網羅した最初の出版物”(p.82)。全文PDFファイルでダウンロードできる。
- The Gallery of Teaching and Learning
- カーネギー財団の教育プロジェクトの成果がまとめられたサイト。
- MERLOT
- カリフォルニア州立大学によるオープンエデュケーションのコミュニティ。
- MOST – 京都大学高等教育研究開発推進センター
- 大学教員の相互研修の場をコンセプトとする招待制のコミュニティサイト。
- * OpenEducation Update JP
- 東京大学・大学総合教育研究センター助教の重田勝介氏(Twitter)が、オープンエデュケーションやICTと教育に関する国内外の最新情報を紹介している。
- * Top Online Bachelor’s Programs
- US Newsによる、オンライン大学ランキング。「Faculty Credentials and Training」「Student Engagement and Assessment」「Student Services and Technology」の3部門で順位付けされている。
第3章 進化と発展の原動力
- University Of the People
- 地球上のあらゆる貧困地域、遠隔地域と高等教育機会をつなぎ、高等教育の普及による世界のよりよいコミュニティ生成を目指す、世界最初の学費無料をめざすオンライン大学(Wikipediaより)。
- Khan Academy
- ウェブ・スター教師の代表格であるサルマン・カーン氏(Salman Khan)による、膨大なビデオ教材が無料で視聴できるサイト。本書では「個人の狂気」が成し遂げた偉業として紹介されている。
- * サルマン・カーン「ビデオによる教育の再発明」
- 上記のカーン氏によるTEDでのスピーチ。
- University of Phoenix
- 教育サービス企業であるApollo Groupによって運営されている営利目的のオンライン大学。
- Creative Commons
- クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CCライセンス)を提供している国際的非営利組織とそのプロジェクトの総称。発起人のひとりはサイバー法学者として知られるハーバード大学法学教授のローレンス・レッシグ(Lawrence Lessig)氏。
- Creative Commons Japan
- CCライセンスを日本の法体系に即したものにすることを目的として2003年に発足した非営利組織。
- * OSCON2002 Lawrence Lessig <free culture>
- レッシグ教授2002年に行った、フリー・カルチャーの重要性を訴えるスピーチ。日本語字幕とスライドつきのFLASH動画。
- * ニコニ・コモンズ
- クリエイターを支援するための素材ライブラリーのほか、二次創作文化の推進を目的としたクリエイター奨励プログラムを提供している。運営は、株式会社ニワンゴ内に設置されたニコニ・コモンズ事務局。
第4章 学びと教えを分解する
- KEEP Toolkit
- カーネギー財団の知識メディア研究所が開発した、電子ポートフォリオの製作支援ツール。スナップショット、スティッチグループ、ギャラリーをインターネット上に掲載して管理することができるオンラインツール。
- Ning
- Netscapeの開発者であるマーク・アンドリーセン氏(Marc Andreessen)が2004年に起ち上げた、自分専用のSNSが作れるサイト。写真や動画の共有、掲示板機能など、一般的なSNSの機能がひととおり揃っているため、学習コミュニティが数多く創られている。
- P2P University
- P2P(Peer-to-Peer:仲間同士)で教え合う草の根の教育ネットワーク。正式な大学として認可されているわけではないが、数多くのスタディグループが形成されている。
- All Kids Online
- アルゼンチンのサンルイス州政府とラ・プンタ大学(Universidad de la Punta)による、病気療養で学校を離れざるを得ない子供たちのためのオンライン学習コミュニティ。LMSにはSakaiが使われている。
第5章 オープンエデュケーションと日本人、そして未来へ
- 名古屋大学 ゴーイングシラバス
- 大学教員のコースデザイン力の向上と授業支援を目的として制作されたシステム。授業の進捗状況など、学生と教員が互いに情報を共有し、双方向でコミュニケーションし合えるよう工夫されている。
- 関西大学 CEAS
- 関西大学が無償で提供する、CEAS/Sakai CLEによる、授業支援型e-Learningシステム。関西大学では全学的にCEASを利用している。
- * iTunes U
- AppleのiTunes Store内で展開されている、世界中の大学の講義を無料で視聴できる教育コンテンツ配信サービス。
- Smart.fm
- 国内最大級の英語学習サイト。
- * レアジョブ
- * Lang-8
- 母語話者同士が互いの学習言語を無料で添削しあう語学学習SNS。京大院生の喜洋洋氏が在学中に起業した。
- * Englishtown
- スウェーデンの私立語学学校であるEF Education Firstの同名子会社が提供するオンライン英会話・英語学習サイト。
ピンバック: Sofia the Firstについて | 巷で話題のウワサ話し
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